『シンポジウムによせて』 福岡東ロータリークラブ 会長 大畑惠三
近年の青少年から児童にいたる数多くの凶悪な事件、幼児虐待の実態等々を見るにつけ、今これ等の原因を一刻も早く解明し、改善への手段を講じることが火急の課題であると思われます。 人類700万年の歴史を振り返りますと、我々の祖先は699万9950年の間は少なくとも一貫して貧困・飢餓との戦いの毎日であった訳です。苦難の連続に耐え抜いて生き抜く能力を、人類は遺伝子のプログラムの中に伝えながら今日に至っています。アフリカの草食動物は生まれ落ちると直ぐ、必死で立とうとします。10分もすれば母親の後を追って走れるようになります。これは生き延びる為にプログラムされた遺伝子情報によるものですが、人間の場合はどうでしょうか? ご存知のとおり人間だけは<未熟児>で生まれて参ります。少なくとも3歳までは保護者の庇護の下に養育されるべくプログラムされて生まれ落ちてくるわけです。又、人間は心身ともに「学習」することで「人間」になれる生物であります。「学習」により能力を獲得するについて、遺伝子は『適時性』をもってプログラムされています。或る能力[A]は、ある特定の時期[B]に(主に)母親との直接的交流体験を通じて学習され、能力として定着いたします。 しかし現在、この子育てに大きな落とし穴となっているのが、テレビを始め「仮想現実」をあつかうツールの出現です。一例を上げますと、授乳期の赤ちゃんの目の焦点距離は20cmにプログラムされています。これはオッパイを飲みながら見上げた目が、ちょうどお母さんの目に焦点が当たる仕組みになっていて、命を繋ぐ大切なオッパイをいただきながら、お母さんからの溢れるばかりの愛情の信号を受け止めながら人間の『情緒の根幹』を育むと言う、人間として育つ重要なプログラムが組み込まれているのです。 しかし、実際にはお乳を与えながら母親はテレビを見ていると言うのが現状です。又、テレビを見せていると大人しいと言う理由で、テレビに子守り代わりをさせる例がございます。しかし、実体験を通じて能力を獲得するべく準備されたプログラムが、現実と仮想現実の識別が不可能な幼児期に、両者共同じ現実として組み込まれてゆく。しかし成長してみれば、それは現実とも又違う!成長した子ども達はこの歪に組み立てられてしまった自分の精神構造をどう扱っていいのか、悲鳴を上げているのです。 <神戸連続児童殺傷事件><全日空ハイジャック事件><佐世保小6女児殺傷事件>等々、彼らの精神状態に共通しているのは、現実と仮想現実が判別されないままの状態で同居していることです。「仮想現実」の出現により子どもの精神構造を非常に歪なものにしてしまっている過ちに気づいたならば、我々は一日も早く行動を起こすべきではないのでしょうか。 本日は幼児に関わる分野に深い造詣をお持ちの方々にお集りいただきました。<もの言えぬ子どもの立場>から今一度「育児」を見直し、あるべき「育児」の姿の再発見につながるシンポジウムとなりますよう願っています。 (平成17年3月12日PM1:00〜4:30アミカス女性センター・ホール) シンポジウム『今、親学とは・・』《育てられる側からの子育て論》 プログラム挨拶文
by keizo-ohata
| 2006-10-02 02:47
| 育児・教育
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