その後チェリビダッケは日本でも<幻の指揮者>として話題に上りはじまました。なんと言ってもその最初はベルリン・フィルとフルトヴェングラーの白黒映画への登場が始まりではなかったでしょうか。
ベートーベンのエクモント序曲の激情とも表現できる彼の指揮振り、限界とも思える早いテンポと、激しくほとばしり出る音楽・・・・しかし、これと同様の音楽表現に留学中のミュンヘン・フィルを指揮しての指揮講習会で再び出会ったのです。ベートーベンの交響曲第5番「運命」の1楽章でした。<運命はかく扉を叩く>動機をたたみかける第1楽章(アレグロ・コン・ブリオ)は、人間がとても堪え難いほどの激しさで演奏され、聴いていた我々は文字通り<音に叩きのめされる>想いがいたしました。「苦難」と「歓喜」の違いはあれ、若かりし頃のエグモント序曲のアレグロ・コン・ブリオと全く同様の世界であったのは興味深いことでした。 この折、講習の休憩時間に、かねてからベートーベンの交響曲第5番「運命」の1楽章で疑問に思っていた箇所があったので、チェリビダッケのテーブルに行き、先生に質問をいたしました。 ピアノから突然フォルテッシモに変わる部分で、1拍目の頭の八分音符からフォルテッシモが記入されているのが疑問だったのです。先生に指し示しながら尋ねると、「ン?これは違う!!」と言うと、持った鉛筆で印刷のフォルテッシモを消してピアノに書き換え、1拍の裏にフォルテッシモを書き込んでくださいました。 はからずもこの書き込みが、チェリビダッケから戴いた大切な宝物の一つになっています。 <チェリビダッケ先生の書き込み>
by keizo-ohata
| 2007-01-16 00:27
| クラシック音楽
|
ファン申請 |
||