恐ろしいほどの「耳」の良さ、驚愕の記憶力、研ぎ澄まされた感性と音楽性についてはチェリビダッケの右に出る人は居ないと思います。
しかし、運動のテクニックとしての「指揮法」に関する分析とメソードへの再構築に関しては斎藤秀雄に一日の長があると思います。斎藤先生は数多くの海外の指揮者の指揮振りを観察し、分析し、理論化してメソードとして再構築しました。 ウィーンのスゥィートナーのクラスでは「昔、クレメンスクラウスがこうしてた・・」とか「クライバーはこう振っていた」とか、「リヒャルト・シュチラウスが・・」などと永い伝統にキラ星のごとく輝いている巨匠から引き継がれたものが語られます。それ自体はゾクゾクするほど魅力的な話なのですが、いざ図形を黒板に描いて説明しようとなると、途中で手が止まって考え込んでしまうような所もあったりします。 チェリビダッケはあの鋭い頭で考え込んで指揮法の理論を組み立てました。1:1,1:2・・と理論化された指揮法を、実際に手を動かして練習します。1年目の時「アレ?理論と運動との間に矛盾がありはしないか?」と感じたので、休憩時間に3拍子の理論と運動について図形を書いて質問しました。一瞬で矛盾に気付いたチェリビダッケから「エエイッ!そんなものはダメダ!」と一蹴されました。しかし2年目に行った時には、それをきちんと修正していました。ほんのささいな事ではありますが、天下のセルジュ・チェリビダッケを一瞬でも追い詰めたのは、内心チョット「ニンマリ」です。 しかしこれも、斎藤先生の下で指揮法を十分に教えていただいたお蔭以外の何物でもありません。
by keizo-ohata
| 2007-03-27 19:49
| クラシック音楽
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