深夜、BSのムラビンスキーの特別番組を見ました。非常に興味深く、色々と考えさせられる内容でした。かつて10秒程しか映像を見たことがなかったので、興味津々で画面に引き込まれるように見てしまいました。
かつて見た時には、その指揮法のレベルの高さに驚嘆した覚えがありますが、今回そのレベルの高さを再確認することができました。要するにレベルの高い指揮法を駆使して音楽作りが出来る指揮者が歴史に残ってきたのではないだろうか。そんな思いがしています。 かつてヨーロッパに第一歩を記したザルツブルグで見たオペラ、ベルディ「アイーダ」のカラヤンの指揮に驚愕を覚えたことが蘇ります。日本に居た頃は、あまりカラヤンの音楽には関心がないままでいたのですが、フェスト・シュピーゲル・ハウスのオケピットで振るカラヤンの指揮を見た時は、ほとんど衝撃に近いものを覚えました。我々が斎藤秀雄先生の最晩年に教わった指揮のテクニックが、非常に洗練されたスタイルで実践されていたのです・・・「恐るべしカラヤン!」そう思いました。ヨーロッパに着いてまだ日も浅い時期のこの事件に、ヨーロッパに内包される伝統の深みを感じ、背筋に寒いものを覚えました。 バーンスタイン・ノイマンなどその後に見た指揮者は、いづれも優れた指揮法を身につけた人々でした。指揮法がまずくて、それでもなお優れていた指揮者はカール・ベームだけだと思います。彼の音楽は余りにも崇高で素晴らしく、そして指揮は大変下手でした。 帰国後にムラビンスキーの指揮の様子を一瞬テレビで見ることができましたが、そのころ私が様々な試行錯誤の結果たどり着いた指揮法のテクニックを、ムラビンスキーが見事な完成度で駆使していることに驚きを覚えました。今回のBS番組で、彼の昨晩の長時間に渡る指揮の様子を見て、その事を再確認いたしました。 スターリンの粛清の嵐の中で、音楽家としての良心を貫くことがどんなに大変であったか、心が痛みます。有り余る豊かな音楽の土壌の中で、非音楽的なものに支配されながら音楽を貫こうとするのと、音楽の土壌のほとんどない日本で、音楽を根付かせようと努力するのと、どっちが辛いだろうか・・・そんな事を思いながら見ていました。
by keizo-ohata
| 2007-05-22 01:53
| クラシック音楽
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