読売日本交響楽団は創立15周年の1977年10月にセルジュ・チェリビダッケを招聘いたしました。チェリビダッケの提示した条件は2つ、1年後に再度招聘することと音楽関係者への講習会を開催すること・・・こうして77年10月,78年3月の公演と2回の講習会が実現いたしました。
幻の指揮者とよばれ、すでにNHKのFM放送ではシュトゥットガルト放送交響楽団における驚異的な演奏で知られている巨匠でした。私はこの2度の講習会を受講し、その後ウィーン留学期間中も6月の約3週間はミュンヘンに滞在、ミュンヘン・フィルハーモニーにおける指揮講習会に2度にわたって参加いたしました。音楽に対するアプローチと理論の根幹はチェリビダッケに学んだと思っています。 その後、jmc音楽教室の楽典のカリキュラムを編成するにあたり、チェリビダッケの投げかけた一言をキーワードに思索を重ねて、音楽の世界を<楽典>と言う切り口から解明し説明することが出来たと少なからず自負しています。 77年の日本における講習会のある日、チェリビダッケはホワイトボードに四声体の和声進行を書き「この音は少し高く。この音はやや低く・・」と説明した後に、こう締めくくりました「5度のことを説明しようとすると、本が一冊書ける。しかし、(書く)時間がない。」・・・この「5度」が永く私の頭の中に留まることになりました。そしてカリキュラム編成にとりかかる1982年、この「5度」のキーワードを手がかりに思索・分析を重ね、4年後に聴音・楽典のカリキュラムが完成いたしました。 例えば、楽典の本では「下属音」の名称について(音階上で)「属音」の下にあるから・・と言う誤りが未だに見受けられます。「倍音」と「5度」「12音」「調」「調号」「和声進行」「カデンツ」「転調」「近親調」「和声外音」と展開する<初級>から<中級>のカリキュラムはe-Book楽典の最も中核を形成する部分です。楽典を音楽の記号や規則の説明書として扱うのではなく、音楽の世界への理解をひも解き、そのプロセスの中に<楽典>の知識を取り込んでゆく・・・そのような趣旨で編纂されたものです。 深い感謝と尊敬の念をこめて、恩師セルジュ・チェリビダッケに捧げます。 2007年10月1日 大畑惠三
by keizo-ohata
| 2007-10-10 14:15
| クラシック音楽
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